Sheltering Sky(Reprise)

You think that luck has left you there
But maybe there’s nothing up in the sky but air
And there’s no mystical design
No cosmic lover preassigned
There’s nothing you can find
That cannot be found


Wicked Little Town (Reprise)
Stephen Trask

それは、私のはじめの宇宙の話だ。

とても静かな冬の夜だった。

まあ、今となると少し笑ってしまうんだが、私は“創造主”について熱弁を振るっていた。
彼と一緒にベッドに横たわってね。

「神話が突き詰めると科学的な様相を帯びてくるのと同じように、科学もまた突き詰めると神話のような様相になる。
どちらも世界を説明しようとしている。アプローチの仕方が違うだけだ。
ねえ、どうしてこの宇宙に、私達以外に知的生命体が存在しないんだと思う?
宇宙の根源には創造主がいて、彼、あるいは彼らが世界を設計、構築した。我々を中心に据えて。
そんな風に感じることはないかい?」
云々。

彼は頬杖をついて聞いてくれていた。
片頬が柔らかく持ち上がっていて、それが彼の表情を、微笑んでいるような、優しい、親密な雰囲気にしていた。
彼の瞳は薄茶色で、昼間は透き通って見えたけれど、夜は柔らかい明かりを映して、蜂蜜のような暖かい色合いになるとその時知った。

「どうだろうね。単純に物事の認識の仕方が違うだけかもしれないよ。
我々の営みはすべて、他の生命体からすれば、ほら、昨日観測した微生物のコロニー…それを我々がそのようにしか認識していないような話かもしれない。
たとえば愛も。
様々な思索のすべて。
彼らには彼らのシステムがある。
それは我々のものと異なるだけで、我々が高度で優れているという話にはならない。
彼らの方がずっと豊かで有意義な生態を持っているという見方もある。
だって、総合的に考えると、僕たちの種族って、どちらかと言うと落第点なんじゃないかな。
君が言うように、創造主がいるとしたら、僕らのことも、まるで僕らが微生物を観察するみたいに、見ていたりするのかな?
“あれはひとつでいいかと思ったが、さて、もう一種類似たようなものが現れたらどのような行動をするだろう?”
そんな興味で、“宇宙人”が現れる日もくるかもしれない。」


そんな話を明け方までしていたよ。恋人同士がベッドの中で? やれやれ。
私より体温の低い彼が、少しずつ暖まって来るのが好きだった。

アイにたどり着いた時。

彼がもうそこにいないのは一目でわかった。
おびただしい血が通路に散らばっていて、それはアイの薄青い照明に真っ黒に見えた。そんな液体が、彼の少しひんやりとした、あの白い身体の中に収まっていたのが、いかにも似つかわしくなくて、その光景は何かの間違いだと思った。だってそうだろう?

彼はいつもいい匂いがした。かすかなベルガモット…そう、アールグレイみたいなね。
でも、そこでは、生々しい死の匂いしかしなくて、私は、彼の抜け殻に触れることもできず、立ち尽くしていた。

荒事とは無縁のようでいて、どんな危険にさらされても、彼は常に冷静で勇敢だった。
危険に身をさらすことを、まったく躊躇しなかった。
自他ともに認めるとおり、彼は頭脳労働専門で、戦闘はからっきしだ。それでも。

ハンターが現れた時、彼はウラジミールに警告しながら、ハンターの前に立ちはだかったのだと言う。
彼らしい。

それからのことは、実はよく覚えてないんだ。
私はハンターを倒し、ユニティへと到達した。


――何度も繰り返してわかったことがある。

コンステレーションをユニティに到達させないことはできる。
これは簡単だ。
だが、ユニティに到達させようと思ったら、“あらすじ”を変えることはできない。

何度繰り返しても、彼はアイで、あるいは、アイに到達する前に死ぬ。
そして、私か、あるいは他のメンバーが、死んだ彼の為にユニティを目指す。

はじめからスターボーンだと明かした宇宙では、そもそも彼はコンステレーションに加わらなかった。
彼は大学教授で、退役軍人の元気で明るい奥さんとかわいい子供たちと、幸せに暮らしていたよ。

バレットが存在しない宇宙もあった。
そこで、私は素知らぬ顔でコンステレーションに加わり、やがて彼と結婚した。
アーティファクトを探すこともなく、一緒に宇宙を旅した。たくさんの発見をした。たくさんの仲間を得た。幸せな人生だった。
だが、当然ながら、彼はユニティに到達しなかった。

ユニティに辿り着くには犠牲が必要だ。

私はネオンの軌道上で彼らに警告した。
それでも、前回は、彼はアイに残った。それはそうだ。彼は機械工学の専門家だ。
アイのメンテナンスでは大きな戦力になる。
そこで私は思い出した。
そういえば、私が関わったシステムがあった。そこに不具合が起こったら?
私のことだ。私がなんとかすると言い張るだろう。
そしてそんな時、彼はいつでも私を尊重してくれる。

そして、バレットがアイで死んだ。
彼はユニティに辿り着いた。

私は歓喜した。
私から彼を奪う宇宙の定めをついに打ち破ったと。
ハンターは、肩を竦めて、何も言わなかった。

彼はスターボーン“プロフェッサー”として我々の前に現れるようになった。
時々、彼ではなく、大きくなったコラであったり、そう、ノエルであったこともある。

宇宙には無限の可能性がある。

でも、決まって彼はこういうんだ。
その大きな目に涙を浮かべて。

「君はバレットじゃない」って。

それでもかまわないよ。
私達は永遠を手に入れた。
何度でも繰り返せる。


ふと、考えることがある。
人類は地球にかつての信仰を置いてきたが、その中に、創造主は自らに似せて人間を作ったとする神話があった。

なるほどたしかに、創造主は我々よりずっと大きなスケールで、これを試しているだけかもしれない。
いつか私は辿り着くだろうか?
その根源に。

私は、星のように輝く、涙で一杯の彼の瞳をみつめながら、そんなことを思っていたんだ。



――君の笑顔が見たいよ。







エミッサリーとプロフェッサー

Sheltering Skyのエミッサリー(バレット)編です。
エミッサリー(ラブレーを失ってユニティに到達したバレット)と、プロフェッサー(バレットを失ってユニティに到達したラブレー)は、結局似たような道をたどります。エミッサリーは自分がアイで殺されるように仕向けてラブレーを救って憎まれることになり、プロフェッサーはバレットと出会う前の自分を殺して入れ替わってバレットと結ばれ、彼らがユニティに行くことを阻止しようとしますが、結局は彼らをユニティに導き、バレットを見送ります。
多元宇宙の扱いが公式でしっかり語られてないので、想像することしかできないのですが、その隙間を埋めるのが楽しいですね。死んだスターボーンはどうなるのか。粒子になってユニティに帰り無数の自分と同期されるのか、記憶は持ち越せるのか。寿命は?DLCでもう少しそのあたりが語られるといいですね。


「火星でヴィクターに知恵の実を与えたのは、この道の先に行き着いた者だ。地球は滅び、すべての物語がはじまった。でもそれは神じゃない。それは悪魔の役回りだ。」


シュレディンガーの猫たち

エミッサリー。なんだい、怖い顔して

どうして君はすぐ死ぬんだい

藪から棒にひどい言い草だな。他所の宇宙の僕の話だろう?知らないよ。僕がユニティに行くまで同期されない。だろう? ユニティに観測されてはじめて状態が確定する。ユニティをくぐるまで、僕らはただの可能性だ。それは君の世界の僕の話だ。僕の世界ではまだ起きていない。

少し黙ってくれ。何度やってもちょっと油断すると君は死ぬ。君は覚悟して人を殺したことがない。だから死がどういうものか知らない。死は肉への零落だ。君が培った知識、経験、人格、すべてが拡散して、ただの肉になる。それがどういうことか、君はわかっていない。だから軽々しく死ねるんだ

僕は45だ。我々はおそらくはじめて幻視を体験したその瞬間に縛られている。だからまあ2年前にアーティファクトに触れた君の世界では43かな? こんな時代だ。長生きしたほうじゃないかな。僕の妻が死んだ時、彼女は28歳だったし、君のアーヴィンだって20代だっただろう。僕のこれは寿命だよ。

時々君のことをぶん殴ってめちゃくちゃにしてやりたくなるよ。エド、おねがいだ。私のために生きてくれ。

僕のバレットは死んだ。君のエドも。君たちスターボーンが殺した。僕たちスターボーン、かな。死を知らない?知っている。それは確定事項だ。もう戻らない。どうやっても。

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